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日本に真の原始環境を誇る高山は日高しかなくなった。 その発達したカール(氷河地形〉をはじめとする地理的特性や、ナキウサギその他の動縞物相など、各専門家の指摘する貴重さをここにいちいち列挙するのはやめよう。
問題は個々の事象にあるのではない。 日本はある意味では文化財保護にかなり関心が強く、考古学的文物やコットウ品の保護にも熱心だ。
ところが、地球上にわずかしか残されていない貴重な自然環境の保護となると、一般の関心も政策もはるかな後進国に位置する。 げんにこの日高も、国立公園にも国定公園にも指定されていない。
十勝側から札内川をさかのぼって驚かされるのは、すでに建設され、あるいは建設中の砂防ダムの多さだ。 さらに驚くべきは、魚道などへの配慮(すなわち環境保護への配慮〉がそこに一カケラもない点にある。

これは日本中のダムにいえることだが、十勝のようにごく最近までサケがどんどん上ってきた地域〔注3〕でさえこういう状況になっていることに、改めてその感覚の鈍さ・後進性を見せつけられるのである。 同行した「日高山脈を守る連絡協議会十勝連絡会」の及川裕氏は幼時から川釣りに親しんできたベテランだが、かつて豊富にいたヤマベは全然釣れなくなり、上流もダムができるに従ってオショロコマハ陸封マスの類)もカジカもほとんど魚影を消したという。
今は「まだ」ダムが及んでいない源琉に限られてしまったが、これもいつまでのことか。 反対側から静内川をさかのぼってみると、林道工事と北海道電力の水力発電工事による猛烈な破壊ぶりにドギモを抜かれる。
ここが地質構造上たいへんもろい地域であることは常識化している〔注4〕が、そのための配慮などほとんど見られない。 けたはずれの巨大ブルドーザーや巨大ダンプカーの群れが投棄する岩石や土砂は木々を埋め、静内川も両側から埋めて、これではまるでアラビア半島あたりの砂漠地帯を川が流れているかのようだ。
かつて開拓部雷撤があった奥高見は、19年前に私が訪ねたころの面影など完全に消え、月世界のような荒れ地をダンプばかりが走りまわる。 林道工事はこれまでにも各所で見てきたが、静内川ほどひどい破壊がすすめられている例も珍しい。
国立公園でないために、法的にも野放しなのだ。

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